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【2024年11月1日(金)】梅田聡教授(慶応義塾大学) の講演会を開催します

2024/10/1

2024年11月1日(金)に梅田聡教授(慶応義塾大学) の講演会を開催します。

 

認知神経科学の基礎研究として有意義なのはもちろんのこと、精神科疾患等の臨床研究にも密接に関連する内容となっております。

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心理的な痛みの認知神経メカニズム: 身体化症状の謎を探る

 

講演者:梅田聡教授(慶応義塾大学文学部)
日時:2024年11月1日(金)
17:00~18:30
場所:吉田南キャンパス総合人間学部棟1階1103講義室, https://www.h.kyoto-u.ac.jp/access/#02

 
抄録:
 心理的な痛みの原因はさまざまであり、不安や抑うつ、心的外傷後ストレスなどの精神的要因、生活環境、経済状況、対人関係、孤立などの社会的要因が複雑に関与している場合が多い。これまでの研究において、痛みを引き起こす神経レベルの要因に関しては、島皮質および帯状皮質から構成されるセイリエンスネットワークを中心とした神経機構、そして痛みを感じる身体部位と中枢との神経連絡を仲介する自律神経機構について、多くの研究成果が得られている。しかしながら、特に、身体症状症に代表される身体化された心理的痛み(痛覚変調性疼痛)については、これらの要因に加え、痛みをはじめとする身体内部の変化を感知する内受容感覚の個人差、および痛みへの注意バイアス、痛みの継続による破局的思考、鮮明な痛みエピソードの記憶、痛みの予測に伴う恐怖感情などの認知レベルの要因も関与しており、そのメカニズムの解明は難を極める。心理的な痛みの病態を理解するためには、これらの要因がどのように関わり合っており、主観としての痛みを生じさせているかを徹底的に調べる必要がある。とりわけ、どのようなメカニズムで痛みが慢性化するのかについては不明な点が多く、この解明は臨床的にも大きな意義を持つ。
 本講演では、上記に基づき、まずは心理的な痛みを考える上で必要とされる要因について整理し、痛みを生じさせるメカニズムを多角的に検討する。具体的には、気圧を変化させる状況下での自律神経反応の特殊性を調べる研究や、内受容感覚に関する一連の研究成果などを紹介し、「脳-心-身体」の三者関係のダイナミクスという統合的観点の必要性について述べる。それらを通して、心理的な痛みを緩和させる可能性について考える。